俺様王子と秘密の時間
顔を上げるとそこには……
綺麗に巻かれた長い髪の毛を押さえ、羽鳥を見つめて微笑んでいるユリさんが小さく佇(たたず)んでいた。
身体が動かなかった。
あまりにも驚いてしまったあたしは、心臓が大きく波打ったのを感じた。
「ユリ……なんで居んだよ?」
羽鳥が一歩踏み出したと同時に、ユリさんも渡り廊下の真ん中辺りまで歩いてきた。
「春くんから聞いたのよ。文化祭だって。雅弥の教室行ったら居ないから、探しちゃった」
クスッと笑うユリさんを見て、花のように笑う人だと思った。
こんなに近くで見たのは初めてで、前に見た時より外見が少し落ち着いた雰囲気だった。
真っ白で清楚なワンピースに、コサージュの付いたヒール。
羽鳥が言っていた“無垢”という言葉が蘇った。
夏の太陽に照らされて、ふわふわ揺れるワンピースとくるくるの髪の毛。
まるで天使みたい……。