俺様王子と秘密の時間
「さっきね、千秋に会ってきたのよ」
ズキンッ――。
また胸が痛みだした。
「アイツに?」
「うん。話がしたくて」
「わざわざ学校に来なくたって、アイツと会ってんだろ……?」
羽鳥はそう言うと、少し離れた場所で立ち尽くすあたしに、チラっと視線を向けてすぐに逸らした。
「うん。でもね……」
ユリさんは言いかけて、ためらってしまいすぐに口を結んだ。
心がポキンと折れてしまいそうになる。
ユリさんからしたらあたしは部外者だ。
それでもユリさんの口から次に出る言葉を聞きたくなくて、耳を塞いでしまいたかった。
けれどあたしは忘れるんだから、と呪文みたいに心の中で唱えた。
そしてユリさんは静かに口を開いた。
「……さっき千秋に言ったのよ。もう無理に、あたしの側に居てくれなくていいんだよって」
「えっ?」
あたしはつい口出してしまった。