俺様王子と秘密の時間
あたしは慌て口を両手で塞いで、目をキョロキョロと泳がせた。
「無理にって?」
羽鳥がそう訪ねるとユリさんは小さく頷いて、話し始めた。
「ほら、わたし。春くんに彼女がいても好きだったじゃない……?それでこんな風に変わって……。きっと、春くんも困ってたのよ。だから、たぶん千秋に頼んだのよ“ユリのこと頼む”ってね……」
ユリさんは話し終えると小さくため息をついて眉を下げて笑った。
「千秋から聞いたのか?」
「……聞いてはみたけど、絶対、“うん”とは言わなかったのよ。でも聞かなくてもわかるわ……。小さい頃からずっとずっと一緒に居たんだから」
その口調がやけに悲しく響いて、あたしは思わずユリさんを見つめてしまう。
あたしの頭の中にあの日の春希さんの言葉が蘇った。
『アイツのこと気になっていたし……、昔から千秋に頼りすぎていたよ、オレ』