俺様王子と秘密の時間
「それを知ってたのに、千秋の優しさに甘えていたのよ、わたし」
「ユリ……」
「でもね、千秋のおかげで春くんに伝えることが出来たのよ……」
「伝える?」
羽鳥の問いかけに、ユリさんは大きく呼吸をすると口を開いた。
「“婚約、おめでとう”って」
そう言ったユリさんの瞳には、キラリと光る涙がうっすらと浮かんでいた。
ずっとずっと、春希さんを一途に、ひた向きに想い続けてきたユリさんと、それを支えた千秋……。
夏合宿の前に家に来たと言った春希さん。
羽鳥がまだ千秋はユリさんと切れていないと言ったけど、そのわけがようやくわかった。
それと同時に千秋の言葉が頭をかすめた。
『闘ってたんだよ』
『夏休み色々あって』
『だからオレは頼まれて……』
千秋はきっとためらいながらも、ちゃんと理由を話そうとしてくれていたんだね……。