俺様王子と秘密の時間
「バカ……」
切なげな表情で、でもどこか優しく微笑むと羽鳥はユリさんの頭をポンッと撫でた。
そしてユリさんは顔を上げると、羽鳥を見つめて小さく笑った。
その横顔に涙はもう消えていて、真っ直ぐな瞳をしていた。
それをただ傍観者の如く見つめていたあたしに目を向けたユリさん。
こっちに近づいてくる。
ドクン……とまた心臓が高鳴り、あたしは手を握りこんでしまう。
「あなた、シイちゃん?」
「え……?」
驚いたあたしはガバッと顔を上げ、カチカチに固まってしまう。
「雅弥から聞いてたのよ。あなたのこと。いつもいつも雅弥はあなたの話ばかりしてるの」
「ば、バカ。余計なこと言うな」
いいじゃない、と言ってユリさんは口元に手をあてて笑った。
「雅弥と千秋のことよろしくね?悪い子じゃないから、ねっ?」