俺様王子と秘密の時間
桜の木の下に並ぶレンガの花壇。
そこにはケータイを耳に当ててあたしの方を見上げる王子の姿があった。
あああああああ――!
バチッと目が合って、何故かあたしは逸らしてしまったんだ。
一定の距離を保ちつつも女の子たちは王子の周りに群がっている。
「ななななにしてるのよ!?」
あたしは窓に背を向けて再びケータイを耳に当て、出来るだけ声を潜めてヒソヒソと言った。
《椎菜、ちゃんとこっち見て?》
「むむむ無理……バレちゃう」
《大丈夫だから、こっち見て?なっ?》
ドキッ――。
あたし、ほんっとにおかしい。
昨日から調子狂ってる。
もう一度、王子に目を向けた。
すると王子はケータイを耳に当てたまま、空いてる方の手を口元に運んだ。
そして口の前で人差し指を立てて微笑んだ……。