俺様王子と秘密の時間
「名前で呼んで?」
王子はそう囁いた。
あたしの唇に息が触れる。
両足の間に収まって、手を掴まれて顎を持たれて、顔がこんなに近くなってる状況で出来ないよぉ。
ドキドキの音も聞こえちゃいそうなくらい、近いんだもん……。
でもこのままだとキスされちゃうかもしれない。
だからあたしは……。
「ち……千秋……」
頑張って呼んだのに、
「ダメ。ちゃんとこっち見ろって言ってんの」
きゃあああああ!
頑張って呼んだのに。
もぉ、ダメだよあたし。
王子の前髪がおでこに触れて、あたしの鼻にコイツの鼻が触れそうになる。
もぉ……どうにでもなっちゃえ。
「千……秋…」
ちゃんと目を見て呼べた時には、千秋の瞳にあたしが映りこんでいた。