俺様王子と秘密の時間
「やっと呼んでくれた」
その時あたしは初めて見たんだ。
大っ嫌いなハズの千秋が柔らかく微笑んだのを。
Sっぽい俺様口調になったり、意地悪言ったり、甘えたような優しい口調になったり。
そんな二重人格王子にあたしは戸惑ってばかりだ。
ドクンドクン……。
すごい速さで高鳴る。
止めることが出来ない。
「呼んだんだから……離れて…」
「まだ離れてやんねぇよ?」
だ……ダメ。
千秋が近すぎて、早く解放してくれないとあたし……ドキドキしすぎて死んじゃうよ……。
千秋があたしの顎から指を放して、接近しすぎた顔を離そうとしたその時。
「あーもぉっ!田口のせいで昼休み終わっちゃうじゃん!」
「説教長いからね?田口は。あたし超ーーお腹減ったんだけど」
新館から中庭へ続く通路の方から女の子たちの声が近づいてきた。