俺様王子と秘密の時間


千秋は乱れる息を吐いてあたしから目を逸らそうとしない。

その吐息があたしの前髪を微かに揺らした。



「早くどいてよ」って言えばいいのに、あたしは固まってしまっていたんだ。


千秋の伏し目がちな表情がこんなにも綺麗に見えるなんて。


見とれてしまう。

早く何か言わなきゃ。

でも……なんだかクラクラする。



ドクン……ドクン……。

きっとあたしの心臓の音は千秋にも聞こえてるんじゃないかって思う。

顔が熱くなって耳まで熱い。



千秋の身体がくっついている。

千秋が芝生についた腕を浮かして、両手を立ててあたしから離れるんだってわかった時。




風の音も消えて……

静まりかえる中庭は

まるで時間が止まったみたいだった。




千秋は自然とマツゲを伏せてあたしの唇に自分の唇をそっと重ねた。

 

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