赤と黒の心理学
偽り
 人が賑わう街中を、ロリータファッションで一人歩いている者がいた。長い髪をツインテールにまとめ、黒地に白いレースがたっぷりついたワンピースとヘッドドレスに身を包んだその姿はどこからどう見ても「ロリータ少女」である。
「ねーねー君それメイドのコスプレ?」
「萌えだね~。」
 今風の若い男が二人、ヘラヘラと「少女」に近付きながら声をかける。
「…うぜえよ、失せろ。」
『えっ…?』
 「ロリータ少女」の口から発せられた声は明らかに「少女」の声にしては低過ぎた。それはどう聞いても「少年」か「青年」の声である。
「あ、あんた女の子だよねぇ…?」
「下、触って確かめてみるか?」
 「ロリータ少女」はニヤリと笑いながら「男」の声で言う。そんな「男声のロリータ少女」に、男二人はたじろぎ
「遠慮しときまぁす!」
「ケッ、オカマ野郎が!」
と吐いて立ち去った行った。
「何が萌えだバカ共が…。にしてもやっぱりロリ服って骨格バレないから便利だよなぁ。」
 そう、この「ロリータ少女」は「少女」ではなく「男」だったのだ。
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