赤と黒の心理学
 京は学生時代も「チビ」「女みたい」「オカマ野郎」「ブスの京子ちゃ~ん」といじめられていた。
―皆が自分を批判する。俺はキモいんだ。
 だが高校時代のある日、ふとテレビで見たヴィジュアル系バンドのヴォーカリスト。そのヴォーカリストは長い髪をアップにしてドレスに身を包み、顔には綺麗な化粧をしている。どう見ても京が惚れる程に美しい女性だった。それなのに低い男の声でかっこよく唄っている。唄い終わった後、番組の司会の人も
「ヴォーカルのRAIさんはこんなに綺麗なのに男なんですよ~。」
と感心していた。
「すげえ…これだ!」
 京の女装した男性ヴォーカリストのRAIにすっかり釘付けで、番組が終わってからも頭から離れない。
 次の日から京は髪を伸ばしだし、お小遣いで少しずつ化粧品を買って集めていった。そして高校を卒業するとアルバイトに明け暮れ、貯めたバイト代でついに黒いロリータ服を買ったのだった。
 初めて買ったロリータ服を着て一緒に買ったヘッドドレスとオーバーニーソックスを身に着け、化粧をした自分を鏡で見たときには明らかに「男」の自分とは違う「少女」の自分がいた。
  それからも京はバイトをしてお金を貯めてはロリータ服を買い集めている。
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