ぼくとあたしの恋物語's
呼ばれるままに振り替えると。

そこには雪の精の中からぼんやりと浮かび上がる男の人。
まるでその雪の精が人間のカタチをして現れてきたかのようで。

びっくりして声のでないあたしににこにこと微笑みかけると、彼は当たり前のようにあたしの隣に座った。

年の頃だと24・5歳?
あたしよりちょっと年上かな。
紅い縁のめがねの奥の瞳が優しい。
全身デニムな彼の洋服の上に雪の精がちょこんと止まる。


「そんな恐い顔しないでよ。別になんかしようとかって訳じゃないから」

じっと見続けてしまったあたしをどう思ったか、彼は困ったような顔をして言う。

「綺麗だったからさ……この景色が。雲の中みたいで」

そうしてにふぁと微笑んだ彼の笑顔は。
たんぽぽの黄色い花のように明るいものであった。

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