蒼空へのシュート  ~先生への想い~


『仁さんのケーキって、どうしてこんなにおいしいんだろう。私にもこんなおいしいお菓
子作れるかなぁ』


「もちろん」


今日もマスターの店で仁さん手作りのあんずのクラフティを頬張りながら何気なく言った。


『でもね、私不器用だし、いままでお菓子作りなんてしたことない』


「大丈夫。人って不思議なもので、苦手と思っていたことでも、誰かのためにって思っただけで力が湧いてくるんだよね。でもさ、お菓子は俺が蒼ちゃんのためにいつでも御馳走
するから心配しないで」


『…うん…ありがと』


「蒼ちゃんて味のバランスとか、センスはすごいよね。才能だなぁーって本当に思うよ。俺のよき評論家だからな。栄養学とか勉強したらもっと料理とかが楽しくなったり、おいしくなったりするんじゃないかなぁ」



『ほんと?栄養学かぁ、そんなこと考えたこともなかった』


誰かのために何かをする。


誰かを思いながら何かをする。


誰かを思える幸せ。



ジャスミンティーの優しい香りが、私の心をくすぐっているようで自然と笑顔になっていた。
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