蒼空へのシュート  ~先生への想い~


その日の午後はまるで私の心が降らせたみたいな、季節はずれの冷たい雨になった。


「なんだ、雨か。傘持ってるか?」


部活が終わって、ぼんやり外を見つめていた私に先生が声をかけた。


『持ってない…』


「ちょっと、待ってろよ」と言って先生は駐車場へ駆けて行って、車から傘を持って戻っ
てきてくれた。


手渡された水色の傘。柄には小さな花の模様があった。


『ありがとうございます』


「気をつけて帰れよ」


そう言って先生は職員室の方へ走って行った。


まだ、仕事なんだ。


先生いつ帰るのかな。


この傘…きっと先生の…




雨の音が静かに傘から聞こえる。



いつの間にか、傘の柄を握る掌が熱く、少し震えていた。


傘をさしているはずなのに、全身ずぶ濡れになっているように冷たかった。


冷たい雨が降っても、気持ちよく晴れる日は必ず来る。



だから今日は思い切り泣いてしまおう。



雨とともにいろいろな思いを流してしまおう。
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