蒼空へのシュート  ~先生への想い~
「蒼ちゃん、連休どっか行かない?」

いつものお店で仁さんがコーヒーを飲みながら聞いた。

『うーん。あの、新しくできたアウトレットに行きたいなぁ。でも混むかなぁ』

私は仁さんお手製の紅茶のシフォンケーキを頬張りながら答えた。

「それもいいけどさ、海はどう?俺の実家の海に。」

『えっ、海?だって仁さんの実家って…遠いでしょ。車でも半日くらいかかるんじゃない』

「うん、だから、泊まりで…なーんてね」

『…えっ…』


予想していなかった会話に驚いて、思わず手にしていたフォークを勢いよく皿の上に落としてしまった。


「ごめん、変な意味じゃなくて。あっ、でも泊まりでなんて言うとね…そうじゃなくて、蒼ちゃんに俺の育ったとこ見てもらいたいって言うか。ってうか俺のこともっと知ってもらいたいんだ」


『…うん』


「ごめん。別に気にしないで」


『ううん。仁さんがどんなところで過ごしたんだか見てみたいよ。でも…』


私の話を遮るように仁さんは勢いよく話し始めた。


「うん。俺もあの新しいショップ行きたかったんだ。蒼ちゃん、おいしいフードコートあるんだよね。何、食べたい?あっ、それとおれ、帽子も欲しいし、Tシャツも見たいなぁ…」


『ごめんなさい…』


「ごめんなのは、俺。急に変なこと言ってごめんね。やっぱ、海は夏だしね」


笑いながら優しく言う仁さん。


ごめんなさい。こんなに私のことを思ってくれているのに…


好きって一体何なんだろう。
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