惚れたアイツにヤケドする?!
「っで、なに?」
彼女は本当に体育倉庫の前に一人で来てくれた。
(しかも、あたしより早く。)
「マミさんって…ヒロと付き合ってたんだよね?」
「そうだよ。」
即答だった。
もし、違ったらどうしようと思った。
「なんで別れたの?」
そう聞くと彼女は黙りこむ。
そっか…ヒロから別れを告げたんだよね・・・。
悪いことしちゃったかな…。
「あたし…婚約者が居るんです。」
「はぁ?」
ずいぶん間抜けな返答をしてしまった。
だって…婚約者って・・・
婚約者って・・・
どこのお偉いさんだよ!?
「でも、武田くんはそれを承知の上に付き合ってくれたの。
いつも優しかった。
ずっと心の中では彼が婚約者だったらいいのにって思ってた。」
彼女は少し微笑む。
ヒロは本当に優しかったんだろう。
あたしには一度も優しい一面を見せないのは
あたしと彼の関係が偽りであるだろうからか…。
「だけどね、すぐにあたしの親にバレちゃったんだ。
あたしの親、そういうことには厳しくて…。
無理矢理引き裂かれちゃった。」
急に切ない声になる。
あの可愛らしい声だからもっと切なく聞こえる。
「あたしは別れるつもりはなかった。
親にどんなに反対されようと、駆け落ち覚悟でいた。
でも、彼はそうではなく、親の言葉を素直で受け入れた。」
「つまり…マミさんは一緒に居たかったんだけど、
ヒロはそれを拒んだってこと?」
マミさんはうなずく。
目は涙いっぱいになっていた。