ひとりごち~足跡帳~
水中から見るキラキラした光と足つくどころか、四方すべてが水という状況にパニックになる余裕もなくずーっと下まで落ち込んでいきました。

ショー用のプールは水深5メートルだそうな。

イルカがあわててる。

「あ、やっちゃった・・・」

助けようとしてるらしいが、やつらは手足がヒレなので抱えあげるわけにもいかず、右往左往。上往下往。(ってこんな言葉あるのか?)

仲間の失態をカバーしようと、プールにいたイルカたちがいっせいに私のほうに泳いできました。

しかしながら、やはり落ちた人間を押し上げることはできない。

「さあ、僕のヒレをつかむんだ!!」

と、言われたような気がする。

とはいえ、4・5歳の幼子にはそんな機転はきかないんだな。

限りなく、ふかーく、透明な水の底へ。

プール内にはダイバースーツを来た係員がいたのでその人が私を助けてくれました。

あまりのことに泣くことも忘れ、ぽけーっとプールに座り込んだ。

当然、その後のプログラムはおざなりに進められてショーは終了。

何が怖かったって、やさしかったお姉さんがイルカに対して女王様してたこと。

「この×××(悪口雑言)が!!!」

「ひぃーごめんなさい、ごめんなさい!!!」

イルカも悪気はなかっただろうに、せっかくの芸のご褒美のイワシはもらえず。

すごすごと自分のプールに戻っていきましたとさ。
私はこの後どうやって家まで帰ってきたか、もう全然記憶ないんだよね。

イルカの助けてくれようとした芸人としてのプロの目とごめんねーと言いたげな口の動きは覚えているのになあ。

こんな仕打ちを受けたのに、イルカは嫌いになれない動物です。

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