milk-ミルク-
「……誰もいねえ」
グランドには、練習着を着た野球部員2人、凸凹コンビ。
俺はバットケースを持っていて、颯人はボールケース。
歩く度にガコンガコンとバットが揺れ、ふらふらと歩く俺に、颯人はいつものように言う。
「渉、替わろうか?」
「…いらん」
その言葉も一瞬にして避ける。
颯人は頬を膨らませて「ぷーん」と言いながら歩き始めた。
そんな中、グランドを出たところからは颯人目当ての観客(ファン)が大勢いた。
ざわざわしながらこっちを見ている。
「颯人、あのファン等、どうにかしろよ。
迷惑極まりない……」
「ひがむなってー。人気者は辛いなあー。
いいじゃん、渉も人気だよ?
かわいいって!!」
ひょこっと俺の顔を覗き込んだ颯人の顔を狙って
「かわいいで喜ぶ男はいねえよ…」
と言いながら颯人の頬をつまもうと手を伸ばすが、
「頬はえぬじーなの!!」
と言って軽々しく避け、
俺はつまもうと必死にジャンプ。
そんな俺たちの様子を見て喜ぶのは周りのファン等。