milk-ミルク-



「渉、行ってこいよ」

後ろで、颯人の声がした。



タオルを被った頭が、雨ですぐに染み渡る。


「……行って来る」



走った。

颯人を振り向かずに。



今行かなきゃいけない。

一番最初に言うんだ。





間に合え。


頼む。





いつの間にか頭を守っていたタオルはなくなって、



「渉真?」





俺はピンクの傘の柄を掴む手を強引に掴んだ。
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