milk-ミルク-
むしろ、好き……と言ったらおかしいが、嫌いじゃない。



これが、ホントの俺だから。


「待ってよー。渉ってば!!」




颯人の長い腕が俺の制服のベストを掴む。

ネクタイの紐も一気に掴まれて、首が危うく締まりそうになる。



「離せー!!!」

「離さーん!!」



ギャーギャー言ってた方が、何倍も楽だった。

でも、
「渉真くんかわいー」
「ちっちゃーい」


と言う声が聞こえると、颯人は俺の制服を離す。



そのまま2人、並んで歩き出した。

颯人は俺の顔を覗き込んで、

「怒った?」


と聞く。

「怒ってない」


颯人はほっとしたように笑う。


ああいう場面では、颯人は必ずそう聞く。

俺が、「かわいい」とか言われるのが一番嫌いってことを、


颯人は一番よくわかってる。
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