NAO
あたしは、女性と同じ目線になるようにしゃがんだ。
「あ…あの…」
あたしの声で体をビクッとさせて、顔を上げた。
髪を一つに結び、目尻にシワがある。
そこから流れる涙…。マスカラが取れて黒の涙ー…。
たぶん…ナオの…お母さんーー。
小さなバックから、ハンカチを出して涙を拭いた。
「ごめんなさいね」
そう言いながら涙を拭った。
「いぇ…あの…ナオの…お母さんですか?」
確認するように聞いた。
「えぇ、そうよ。あなた…直樹の友達?」
“友達”という言葉に戸惑った。