NAO
†ピアス



 あたしはずっと泣いた。



 「もう大丈夫?」


 「うん…」


 「よし、じゃ…出かけよう!」



 そう言って古賀さんはあたしの手を引いた。



 「古賀さん、あたしそんな気分じゃ…」


 「良いから。行くわよ!」



 無理やりあたしは、街に連れ出された。



 「古賀さん…あたし…街で遊ぶ気分じゃないよ。」


 「良いじゃない。それに…」


 「それに?」


 「そんな沈んだ顔で直樹君と会った時、心配されるよ。」


 「そうだけど…」


 「直樹君…ちゃんと治療を頑張ってるの。退院して、愛ちゃんに会って一緒に街を見たりしたいんだって。」



 優しい笑みで話す古賀さん。


< 234 / 367 >

この作品をシェア

pagetop