NAO



 「本当よ。だから…あなたは…早く新しい人でも見つけると良いわ!」



 そう言っておばさんは、下へおりるボタンを押した。



 「おばさん、まっ…」



 あたしが言い終わる前に、扉が閉まった。エレベーターは下へと降りて行くーー。


 愛がいなくなると、おばさんはエレベーターに寄りかかり涙を流した。



 「愛ちゃん…ごめ…ごめんね…あな…あなたの…ためなの…」



 そう言って、声を押し殺して泣き続けた。


 エレベーターの前で…おばさんがどんな気持ちで泣いていたかなんて…愛は知らないーー。


< 274 / 367 >

この作品をシェア

pagetop