NAO



 お袋は俺の異変に気づかず“手紙?”と言って側に来た。


 お袋に手紙を渡した俺は下に俯いた。


 床をジッと睨んでいると…ヒラヒラと落ちる手紙ー…。


 ゆっくり顔を上げてお袋を見れば…真っ青な顔をしている。



 「直樹…あんた…これ…」


 「読んだよ…全部…これ…ウソだよな?」



 引きつった顔でお袋に聞いた。


 お袋は俺の顔を見ない。それどころか、顔を逸らして目を合わせようとしない。


 あの時と同じー…。


 手術の後…お袋に愛の事を聞いた時とーー。何も答えないお袋に俺は…。



 「お袋…この手紙…ウソだよな!全部…ウソだよな!」



 お袋を問い詰めている時“ただいま”と言って親父が帰って来た。


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