NAO



 俺はずっと…部屋に籠もっていた。


 大学の卒業式も出席しなかった。


 そんな俺のもとに…親父達が来た。


 何度も扉から聞こえる声ーー。



 「直樹…少しだけでも…ご飯を食べて。」



 そう言ってくるお袋の言葉に何も答えない。


 今は何も食べたくないし…誰とも話したくない。


 俺の頭は…愛の事でいっぱいだ。


 学校の桜並木道で出会った事…屋上…放課後のキスー…。


 愛と過ごした数ヶ月間の事が…昨日の事のように蘇る。



 「…して…どうして…離れちまうんだよ…俺達は…結ばれねぇのかよ…」



 抜け殻のように呟いたーー。


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