NAO



 俺1人…何も知らないで…過ごしたと思うと…悔しいー…。


 ギュッと握る手ーー。


 爪が皮膚に食い込むくらい握った。



 「お袋…何で…謝るんだよ…」


 「直樹…全部…全部…母さんが悪いの…」


 「そんなんじゃ分かんねぇよ!」



 怒鳴る俺に、お袋は崩れるように座った。



 「来たの…」


 「来た?」



 “うん”と頷いて話を続けた。



 「あの日のお昼過ぎ…愛ちゃんが…病院に来たの」


 「あの日って…」


 「愛ちゃんが事故に遭ったクリスマス…母さん…病院に来た愛ちゃんを…追い返したの…」



 そう言って涙を流すお袋。


< 309 / 367 >

この作品をシェア

pagetop