NAO



 「分かったような事言うな!」



 そう言って、信号が変わった交差点に入ろうとしたーー。


 それでも…俺の腕を唯は離さない。



 「離せよ!」


 「イヤ!お願い…やめて…愛が…愛が可哀想だよ…」



 ボロボロと流す涙は…俺の手の甲に落ちるーー。



 「どうして…愛が…可哀想なんだ?」


 「だって…アンタの心臓は愛のだよ。あの子に…また…痛い思いをさせるの?」


 「痛い…思い…」


 「そうだよ…あたしはイヤだよ!あの子を…苦しめないで…」



 唯は俺の袖を掴んだまま…崩れるように座った。


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