【盲目の天使】番外編
しかし、それからしばらくして、事態は思わぬ方向へ急展開した。
プロン王が、急死して、カルレイン様の弟君のアルシオン王子が、王妃である自分の母を犯人として捕らえたのだ。
俺は、カルレイン様の命令で、二人を牢へと迎えに行った。
「マーズレン!!」
俺の顔を見るなり胸に飛び込んできたルシルの体を、俺は力いっぱい抱きしめた。
あぁ、草の香りがする。ルシルの匂いだ。
ルシル!
ルシル!
ルシルッ!!!
俺は、一回り細くなったルシルの体が、愛しくて仕方なかった。
会えなかった日々に、一つだけ感謝するとしたら、俺がどんなにルシルを愛しているか、はっきりと自覚したってことだろう。
いつもなら、ここで茶々を入れてきそうな母も、黙って俺たちを好きにさせている。
と、ようやく落ち着いたルシルが、涙目のまま笑顔で俺を見上げた。
「リリティス様は、どちらにいらっしゃるの?」
俺は、ごくりとつばを飲み込んだ。言いたくないけど、言わないわけにもいかない。
「リリティス様は・・・」
蒼白なルシルが、そのまま俺のほうに倒れこんできて、
俺は慌てて吹けば飛びそうな彼女の細い肩を支えた。