【盲目の天使】番外編
「ルシル」
俺は、ルシルの手を取って、バルコニーの前面へ進んだ。
こんなにも大勢の人の視線を受けるのは、生まれて初めてのことだ。
一気に緊張が高まって、俺は深く息を吸った。
「カナン国王付き、近衛隊長マーズレン・カストマは、
カナン国セシムの長女、ルシルを、
生涯かけて愛し、守り抜くことを、天と、そしてカナンの民に誓います!」
俺は、息切れがして倒れるんじゃないかというくらの大声で、
空に向かって宣言した。
一拍後、わぁ~!!という、民衆の叫び声と、拍手、それに、
よくやった!、男だ!
なんていう野次がつぎつぎに飛んでくる。
「はぁ。はぁ」
俺は、あまりの緊張に、肩で息をしていたが、またしても、悪魔の親玉のようなカルレイン様の一声が飛んできた。
「ほら、さっさと口付けして口先だけじゃないことを証明しろ。
みんな期待してるぞ」