【盲目の天使】番外編
「なんだ、すでに尻にしかれているのか、マーズレン」
カルレイン様のケラケラという笑い声に混ざって、いやに大きく母のため息が聞こえる。
「ル、ルシル。女性の方から口付けるなんて」
はしたない、と言おうとして、ルシルが泣いているのに気付いた。
「ルシル?」
「マーズレン。私、私とっても幸せだよ。
こんなにきちんと誓ってくれるなんて、思ってもみなかった。
ありがとうね。私、絶対頑張っていい妻になるから」
俺の胸に顔をうずめるルシルは、なんだかすごくかわいくて、俺は気持ちを新たにした。
「頑張らなくてもいいよ。俺は、今のままのルシルが好きなんだから」
ふと、母のにやにやした顔が目に入って、
どうやら、最初から一枚かんでいたんだなって、今頃になって頭が回った。
まったく、それならそうといってくれれば言いのに。
言われれば逃げてたかもしれないけどさ。
ま、おかげで、ルシルが喜んでくれたから、そこは感謝しなくちゃね。
俺は、ルシルの細い肩を支えて、微笑んだ。