【盲目の天使】番外編

「なんだ、すでに尻にしかれているのか、マーズレン」


カルレイン様のケラケラという笑い声に混ざって、いやに大きく母のため息が聞こえる。


「ル、ルシル。女性の方から口付けるなんて」


はしたない、と言おうとして、ルシルが泣いているのに気付いた。


「ルシル?」


「マーズレン。私、私とっても幸せだよ。

こんなにきちんと誓ってくれるなんて、思ってもみなかった。

ありがとうね。私、絶対頑張っていい妻になるから」


俺の胸に顔をうずめるルシルは、なんだかすごくかわいくて、俺は気持ちを新たにした。


「頑張らなくてもいいよ。俺は、今のままのルシルが好きなんだから」


ふと、母のにやにやした顔が目に入って、

どうやら、最初から一枚かんでいたんだなって、今頃になって頭が回った。


まったく、それならそうといってくれれば言いのに。

言われれば逃げてたかもしれないけどさ。

ま、おかげで、ルシルが喜んでくれたから、そこは感謝しなくちゃね。


俺は、ルシルの細い肩を支えて、微笑んだ。




< 87 / 90 >

この作品をシェア

pagetop