癒やしの里
日が暮れるにつれて人出は多くなり、こんな小さな村にこれだけの人が住んでいたのかと驚きつつ、俊次くんは神社をあとにしました。
そしてあの丘の頂きまで来ると、もう一度村を振り返りました。
なおも風にのって聴こえてくる祭り囃子に、後ろ髪を引かれる思いでしたが、
「さようなら。とても楽しかった。また来年も来られたら、いいな…」
と呟くと、今や心の傷の癒えた旅人はニッコリと微笑んで、丘を向こうへと下って行きました。
東京へ向かう帰りの列車のなかで、俊次くんはいつまでも、今日の素晴らしい出逢いの余韻に浸っていました。
翌日。
俊次くんは自宅のアパートの一室で、愕然とTVの画面を見詰めていました。
それは、現在では失われた日本各地の風景を、残された映像で紹介する番組で、いま映し出されているのはなんと、つい昨日俊次くんが訪れた、あの東北地方の村の秋祭りの様子でした。
さらに俊次くんを愕然とさせたのは、どこからどこまでも見憶えのある光景にのせて流れる、次のようなナレーションでした。
“これは今から二十年前、村がダムの底に沈む前年に撮影された、村の最後の秋祭りの様子です…”
そしてあの丘の頂きまで来ると、もう一度村を振り返りました。
なおも風にのって聴こえてくる祭り囃子に、後ろ髪を引かれる思いでしたが、
「さようなら。とても楽しかった。また来年も来られたら、いいな…」
と呟くと、今や心の傷の癒えた旅人はニッコリと微笑んで、丘を向こうへと下って行きました。
東京へ向かう帰りの列車のなかで、俊次くんはいつまでも、今日の素晴らしい出逢いの余韻に浸っていました。
翌日。
俊次くんは自宅のアパートの一室で、愕然とTVの画面を見詰めていました。
それは、現在では失われた日本各地の風景を、残された映像で紹介する番組で、いま映し出されているのはなんと、つい昨日俊次くんが訪れた、あの東北地方の村の秋祭りの様子でした。
さらに俊次くんを愕然とさせたのは、どこからどこまでも見憶えのある光景にのせて流れる、次のようなナレーションでした。
“これは今から二十年前、村がダムの底に沈む前年に撮影された、村の最後の秋祭りの様子です…”