抜けないリング~先生の薬指~
1章
――ママ。
――なぁに、かんちゃん?
――なんでかんのってなまえなの?
――そうねぇ…
私の生命は神様からの贈り物だから。
母は笑顔で答えた。
神ノ子だから神乃。
それは傲慢ではないか。
私は神ではなく人の子なのに。
幼い私には、
まだそんなことは言えない。
ただ漠然と、
名前だけが浮いている気がした。
だから誰かに私の名前を呼ばれると、
神乃ではなくカンノと聞こえる。
決して嫌ではない。
嫌では、ない。