抜けないリング~先生の薬指~
先生とこうして向き合っていると、先生に会ったときに感じた例の嫌な予感も何のその。挙げ句、気のせいとさえ思えた。
気さくに話し掛けてくる先生は、生徒に対する、というよりかは友達に対する感覚で言葉を交わしてくれる。
伊奈が言う萌える、萌えないは別として、この先生はその内人気が出ると確信した。かく言う私も彼には好印象を抱き始めていたから。
お兄ちゃんのような親近感が湧く。
私は姉と二人姉妹なので本当のところはよくわからないのだが、きっとこんな風に感じるのだろう。
いつの間にか、左に居る伊奈の視線が柔らかくなっていた。男嫌いの私がこうして喋っているのが嬉しいのかもしれない。