抜けないリング~先生の薬指~
「…つまり現社の授業中に睡魔に襲われて全く聞いていなかった、と?」
「はい。仰る通りです。」
そもそもあんな小さな声で授業しているのが悪い。
私の席は窓側。意外にも死角。
窓を開ければ肺一杯に春風が舞い込む。
寝ないでいろ、と言う方が無理がある。
とは言っても、伊奈には頭が上がらない。私のノートは見事に白紙なので。
「初っぱなからよくやりますのう、カンノ殿。」
伊奈は立ち上がり、さらに腰に手をあてて、完全に私を見下した。
それから文字がびっしり埋まったノートで、私の頭を数回叩いた。
どうでもいいが、この女、かなりムカつく。
「ははは、有り難く思いたまえ。」
「痛っ、てか角は卑怯だろっ。」
腕で攻撃をガードする。
それでも角が刺さって痛い。