抜けないリング~先生の薬指~
その時チャイムが鳴り響いた。
相変わらず先生が来ない。
初回から自習なのだろうか。
神という字を書き終えて、ぼんやり考えていた。
「あっ、ほら、かんちゃん!」
伊奈が私の背中をバシバシ叩くので、痛みに顔を歪める。当の本人は全く私の顔など見てないのだが。
いい加減にしろ、と後ろを振り向けば、新たな邪魔が訪れたのである。
例の如く、派手にドアが呻いた。
今回はガラガラガラガラというけたたましい音。
「悪い。遅れた。」
息を切らして、周知の事実を述べる。
プリントの山を両腕で抱きかかえてはいるものの、今にも崩れてしまいそう。
皆はどちらかというと突然のドアの音に驚いたため、彼の登場にすぐさま言葉を発せられなかった。