抜けないリング～先生の薬指～

ペシンという間抜けな音と、痛くもないのに呻く私の声が、私自身を現実に引き戻した。

ノートを持った伊奈は溜め息を漏らし、前の席の美空ちゃんはクスクスと笑いをこぼしている。


前を見れば先生までこちらを見ていて、周りを見ても全員がこちらを見ていた。


慌てて立ち上がれば、ドっと笑い声に包まれて、これでもかと赤く色付いた顔で俯いた。


いたたまれない。
先生を軽く睨むと、先生まで笑い始める。



怖くないことは知っている。
逆に、笑うところじゃないことも知っている。



「ごめん、相田。やっぱ席後ろな?」

先生は美空ちゃんに指示を出す。
美空ちゃんはこくりと頷き、ノートと教科書を私の机の上に置いた。

それから愛らしくにっこり笑って、

「カンノちゃん、最前列だってさ。」

と語尾に音符を付けたいくらい嬉しそうに言った。