抜けないリング~先生の薬指~
「な、なんで?!」
狼狽えた。
だって窓際2列目は睡眠学習に絶好のポジションだったのに。
「あ、そっかぁ、かんちゃん、数学の授業聞く気ないもんねぇ?」
伊奈がわざとらしく大声をあげる。手は欧米人がよく取る、ニホンゴワカリマセーンのポーズ。
そうだ、その通り…では分が悪い。
「い、いえ!私、数学頑張りますから!」
だから見逃してくれ、と先生に熱い視線を送る。
その瞬間先生はニヤリと意地悪く笑い、こう続けたのだ。
「そっかあ。そんなにやる気あるなら相田と交換。これから数学をビシバシ教えるからなー。」
「えっ?いや、ちが」
「ありがとう、カンノちゃん!」
「だから、えっと、って嫌だってば…」
かくして、羽賀先生の数学の授業時に、最前列というポジションを頂いたのである。