抜けないリング~先生の薬指~


「ご静聴有難うございました。」

やる気のない拍手に包まれ、同窓会長はマイクを置いた。

ステージ上の同窓会長はご機嫌そうに見える。それもそうだ。あの人の生きがいはこういうイベント時のスピーチぐらいなのだろうから。

周りを見渡せばあぐらを組み、頭を下げている隙だらけの生徒ばかり。
聞いていた分、私の方が真面目なはず。


すると後ろから突然、少々遠慮がちに肩を叩かれた。

「寒いなら先生に言って窓閉めてもらう?」

フレームレスの眼鏡をかけた、見た目優等生の彼女が、私の発言に彼女なりに気遣ってくれている。

申し訳ない。自分ツッコミです。

初対面の、これからクラスメートになる子にはなかなか言いづらい。
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