抜けないリング~先生の薬指~
術もなく
コロコロと呼んでいる掃除器具がある。
両面テープが一巻き先端についていて、カーペットでコロコロ転がしてゴミを取るあの用具。
正式名称は知らない。誰か知っていたら教えてほしい。
「あーりーえーなーいぃ!」
そのコロコロを何回も転がしながら悪態をつく。その都度何度も何度もテープを剥がし、また新しい状態に戻していった。
「かんちゃん可哀想に…」
「八割はお前のせいだ。」
残りの二割はあんな単純な手に引っかかった私のせい。ムキになってしまった自分が我ながら恥ずかしい。
「でも良かったじゃん。羽賀先生の目の前で。」
「いいなぁ、カンノちゃん、羨ましいなぁ。席代わっちゃって残念だなぁ。」
掃除機をかけていた伊奈に、手持ち無沙汰の美空ちゃんまで加勢する。
ちっ、と舌打ちしたい衝動を抑えて、代わりにコロコロを素早く転がした。