抜けないリング~先生の薬指~
「おぉ、今日は早く終わりそうだ。」
扉に背を預け、腕組みをしながら頷く彼の招待は羽賀夏芽。
感心、感心、とでも言いたげな表情。
そうだ。伊奈より間抜けな自分より、まずはこいつのせいだ。
「ここらで終わりにしよっか。もういいぞー。」
羽賀先生は私の手からコロコロをひょいっと抜き取り、開けっ放しの掃除ロッカーに突っ込んだ。
そしてロッカーを閉じる。バコンと音を立てて。
この適当な後始末は、彼の性格をそのまま反映しているのだろう。
雑というよりか、そういった適当さを楽しんでいる、といった感じ。
なに解析してんだか。
この時、私にとって羽賀先生という人物はまだ掴めない、謎の人物だった。