抜けないリング~先生の薬指~
「カンノ、ああ、俺のカンノ!」
「先生、ああ、私の先生!」
「…うぜぇ。やりたいなら劇団にでも入れ。」
伊奈と美空ちゃんが目の前で劇を披露している。
伊奈が先生役、美空ちゃんが私役。
こんなことで盛り上がれるのだから、相当な幸せ者だ。
「満更でもないくせにぃ。」
私の肩に顎を乗せて、伊奈が耳打ちしてきた。
その伊奈を引き剥がそうとジタバタしていたら、左肩に美空ちゃんが顎を乗せる。
「か・ん・の。」
美空ちゃんの囁き。
しかも吐息混じり。
「やめろぉ!」
「かんちゃん、顔赤いよー?」
「あ、ホントだ。カンノちゃん、可愛い。」
正直に明かそう。
確かに、嬉しかったんだ。
呼び捨て。