抜けないリング~先生の薬指~
「なんだー?物騒なこと考えてんな。」
カラカラと笑う声が背後から聞こえる。
この声の持ち主は一人。
ああ、心臓が酸欠状態。
「今日は来れないって…」
「ああ、教室が案外早く終わったから様子を見に来た。」
「どんだけ好きなんですか、ここの掃除。」
「だな?俺にもわからん。」
笑うと目尻が下がる。
いつも凛々しい黒い眉が、少し頼りなく見える。
少年のように、笑う。
私はこの顔を、知っている。
この笑顔を、知っている。
「羽賀ちゃーん!」
すると羽賀先生の後ろから数人の女子が駆けてきた。
この子達、確か隣のクラスの子。
羽賀ちゃん、か。
先生よりもしっくりきてしまう。
「おうっ!じゃあカンノも掃除、終わりにしようか。」