抜けないリング~先生の薬指~

先生に言った覚えはない。
なのに知っているとなると、伊奈が漏らしたのだろうか。

いずれにせよ、覚えていてくれたことが嬉しかった。素直に、嬉しいと思った。


「良かったじゃん、カンノちゃん。愛されてんねぇ。」

彼女達は決して嫉妬心から言っているわけではない。本当に友達同士でからかうように言ってきた。


しばらく先生は慌てていて、私は恥ずかしさに顔が赤くなったのを隠しながら必死に否定をした。



たぶん先生が盗み聞きして、変な由来だったから覚えてたんだよ、と。



私のせいでその後先生は変態などと騒ぎ立てられて、変態じゃないとしきりに繰り返していた。




盗み聞きしていたかどうかは知らない。
ただ後に彼は、この時私をこのヤローと思った、と告げた。笑いながら。


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