抜けないリング~先生の薬指~



「あ、センセの指輪可愛いー!!」

突然、一人の女子が先生の左手の薬指を握った。

私の世界が一瞬無音になる。


「ん?あ、これか。」

先生は薬指のリングを私達の目線近くに晒した。銀色の、エンゲージリング。

女の子なら誰しも憧れるそれは、私には少し眩しすぎるようだ。



先生は薬指から指輪をするりと外して、周りの子に見せていた。

次々と聞こえる可愛いの声に、居づらさを感じた私はそっとその場を後にしようとする。



先生はそんな私に気が付いたのだろうか。


「カンノも見るか?」


私の前に指輪をかざす。



先生は優しい。
優しいけど、それは優しさじゃないよ。



なのに不思議。


結構です。
と続けようとした唇が閉ざされて、自然と右手を差し出していた。


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