抜けないリング~先生の薬指~
白を汚す
一度認めてしまえば簡単。
症状は重傷化。
自分は少なくともこの三年間、恋だ愛だのと関係を持つとは思わなかった。
まして世に言う禁断という恋に片足を突っ込むなど、今まで微塵も、考えたことすらもない。
溜め息の回数は明らかに増えた。
比例して胸の高鳴りも増えた。
片肘に重心として頬をついて、ただ先生を頭に浮かべる。
白衣と眼鏡と、寝癖混じりの黒髪。
私の脳内での先生は毎度背を向けている。真っ白で、どこまでが背中なのかわからない後ろ姿が遠ざかっていく映像。
そこに音など存在しない。
私の声も存在しない。
遠ざかる靴音すら存在しない。
毎回こうして物悲しい。
何回も笑顔を思い描いているのに、なかなか笑いかけてくれない。