抜けないリング~先生の薬指~
「毎度ながら痛いっての!いや、私の脂肪燃焼に協力してくれてんの?」
「ちがう!かんちゃん、本当なら今の一撃で殺人鬼伊奈ちゃんに殺されてたんだからねっ!」
目の前に人差し指がぐっと近付いてきた。あえて擬音を加えれば、ビシッといった具合に。
ふん、と鼻を鳴らしふんぞり返るこの女。
お前は子供か、などと冷ややかな視線を送っても無意味なのは百も承知。
「もしかして、かんちゃん…かの恐ろしい病気にかかってしまったんだね?」
とは言いつつ、先ほどの不安は消えないらしい。恐る恐る尋ねる伊奈もだいぶ不気味だ。
恐ろしい病。巷で流行っている病気だろうか。
いや、待てよ。
ひょっとして、病は病でも恋の病とでも言う展開か。
確かに今の症状は正しくその病だ。