抜けないリング~先生の薬指~
「ちが」
違わない。
私は先生が好き。
でも言えるわけがな…
「五月病だね、かんちゃん!!」
…はっ?
「正確には今は水無月ですが、ふふふ…伊奈様の目は誤魔化せぬぞっ」
不適に笑う伊奈の頭を思い切りノートで叩いてみた。すぱんっ。軽快な音が教室に鳴り響く。
「お前、ほんとアホでありがとう!!」
「痛っ。だからって新しい感謝の表し方をここで披露するのはひどいと思いまーす。」
伊奈は頭を押さえて、頬を膨らませて怒りを露わにしたが、正直全然怖くない。
「人のコトを冷や冷やさせた罰です。」
ごめん、伊奈。
いつか言える日が来たら言うからね。
それまであんたらしく阿呆のままで居てね。