抜けないリング~先生の薬指~
私は典型的な文系の人間で、科学や数学はどうも好きになれなかった。
でも先生の数学は好き。先生が嬉しそうだから。分からないと頭を抱えている私の机の横にしゃがんで、すらすらと流れる緑の文字も、上目遣いで笑う先生も、好き。
「かんちゃん、なんかキモっ!!!」
頬が緩みっぱなしの私を見て、伊奈が目を丸くする。
そこには敢えて反論しないでおこう。
余計にやけそうだから。
「好きな女の子のリコーダーをとうとう吹いてしまった小学生男子の顔してたっ!!!!」
「…ごめん、やっぱ反論させて。」