僕とみつばち
16時半からまた外回りで、バンのエンジンをかけ、半ば諦めつつも一応、プライベート用の携帯が胸ポケットに納まっているのを確認した。
向かっていたのは、いつも面倒な発注をして、担当者の僕を悩ませる顧客の所だった。
ある時は他のライバル顧客が発注した内容を教えろとゴネ、やんわり断ると、さもなくば他社に鞍替えしてもいいのだとまで言ってくる始末だ。
さしずめ、大口顧客がこちらの足元を見た、というところだろう。
感情的になってしまえば明日は無い。
何度と無く胃を荒らされそうになったが、今日はどうにもすんなりと、新たな契約を取り付ける事ができた。
なかなか無い、良い気分でバンに乗り込んだ瞬間。
胸にしまいこんだ携帯が鈍く震えた。
from:ナツミ
うん。分かった。
楽しみにしてる。
090********
ウィンカーを勢いよく上げ、深めにアクセルを踏み込んだ。