僕とみつばち
聞け。
いや、聞くな。
ダメだ。
「あのね、今更なんだけど。」
「…うん。」
「わたし。」
言うな!!!
逃げ出したい気持ちを必死で抑える。
胸の早鐘はさっきの比ではない。
「結婚してるの。」
やや、しばらくの沈黙の後。先に口を開いたのは僕だった。
「あ、そうなんだ。」
しかし、口をついて出た言葉はそっけなく、自分でも拍子抜けするほどだった。
「怒らないの?」
「なんで。」
「だってあたし、黙ってた。」
「結婚してないとは言ってない。だから、嘘はついてない。」
「そっか…。そうだよね。」
またしばらく沈黙が続いた。
ワカコは罪悪感と、言ってしまってすっきりした、そんな感情が混ざったような顔をしていた。